昨今の教育改革では「早く正解を導く」ことから、「課題を発見し、最適解を導く」教育へとシフトしつつあります。品川女子学院では2002年から実社会と直接関わる教育を重視し、多くのプロジェクトに取り組んできました。さまざまな取り組みが評価され、2014年から5年間、文部科学省より「スーパー・グローバル・ハイスクール」の指定を受け、終了後も『学校と社会が連携し、「起業マインド」を持つ女性リーダーを育成する』というテーマのもと、研究と実践を続けています。

品川女子学院で生徒が身につける力

「起業マインドを持つ人」とは「自ら社会の問題を発見し、多様な人を巻き込んで、問題解決に一歩を踏み出す人」と定義します。これは必ずしも実社会で起業する人のみを意味しません。社会のあらゆる場所で、起業家的なマインド(=心の構え・姿勢・態度・思考法)を持って他者への影響力を発揮する人物が「グローバル社会のリーダー」たり得ると考え、このような目標と、その実現のための方策を組み立てました。生徒に身につけさせる評価軸は次の5つの力を設定しています。

起業マインド

社会の問題を発見する・多様な人を巻き込む・
解決に向けて一歩を踏み出す

問題発見力

身近な興味・関心から社会と関わる問題を発見する力。

共感力

感情に左右されず、他者の立場や考えから影響を受けながら、自分の意見を改善する力。

発信力

自分の意見やアイデアを提案し、他者に影響を与える力。

内省力

自分の行動を振り返って分析し、将来に向けた行動を見つける力。

基礎学力

活動のよりどころとなる知識・教養。

基礎学力

活動のよりどころとなる知識・教養。

これらの力を育成するためのさまざまなプログラムを有機的に関連づけ、学校外と連携しながら実践を通して能力が身につくよう生徒が主体的にチャレンジできる機会がたくさん用意されています。

デザイン思考 中等部 「デザイン思考」から「問題発見力」を育成する

2012年に導入しました。「問題解決以前に問題発見を重視する」「チームで動く」「やってみて検証」という考え方が、本校の大事にする価値観と一致していると考えています。1年次より主として道徳・総合学習において学び、学校活動のさまざまな場面で応用しています。

  • 共感
  • 課題定義
  • アイデア
  • 試作
  • テスト

SDGsを体感する[1年生・校外学習]

木更津市「クルックフィールズ」にて、サステナビリティと自分の日常とを結びつけて考えます。仮説と検証の体験やグループワークの作法など、今後さまざまな取り組みをしていくうえでの導入となります。ここでの体験を身近な問題と結びつけて、文化祭の発表につなげていきます。

デザイン思考とは何かを知る[1年生・道徳]

「共感→課題定義→アイデア→試作→テスト」の流れについて、まずユーザーを観察し理解する「共感」から入ることが大切であることを学びます。文化祭をはじめとするさまざまな行事・授業で、デザイン思考を活用して課題解決型学習に取り組んでいきます。

文化祭における発表

各学年で総合学習の中間発表と位置づけています。学年テーマを「身の回りから社会へ」→「起源としての日本社会・文化」→「未知の世界へ」として、視野を広げながら問題を発見し、解決に向けてアクションを探ります。

継続的に活用

デザイン思考を用いて課題解決に取り組んでいけるように、文化祭だけでなく道徳授業や総合学習の時間など、さまざまな場面で意識的に活用していきます。これらの経験が、起業体験やCBLに取り組むうえでの土台となります。

起業体験プログラム|3年生

3~5年生で実施する起業体験プログラムでは、3年生は各クラス、4・5年生は目的を共有する大小さまざまな規模の有志団体を1つの株式会社と見なし、取締役(社長・マネージャー・会計長)や社員といった役割を決めて会社を運営。株式を発行し、起業体験プレゼンテーションで出資金を募るなど、本物の株式会社さながらの体験を行います。それぞれ必ず「企業理念」を持ち、その理念を達成するために運営を行うという点で、単なる模擬店とは大きく異なり、発想力や課題解決思考をもとに活動する品川女子学院ならではの取り組みとなっています。

■起業体験プログラムの流れ
4月|
◉企業の取締役の決定 ◉企業理念作成
5月|
◉企画書作成・提出 ◉企業との交渉 ◉起業体験プレゼンテーション準備
6月|
◉起業体験プレゼンテーション
7・8月|
◉設立登記 ◉協力企業との話し合い ◉当日運営の準備
9月|
◉店舗装飾 ◉当日の運営 ◉決算作業・監査報告 ◉株主総会 ◉利益配当 ◉解散

CBL(Challenge Based Learning) 4年生 問題を分析し、解決策を考え実行する力を育成する

CBL(Challenge Based Learning)とは、「身近な問題を見つけ、その問題について調査・分析し、解決策を考え実行する」課題解決型の学習。品川女子学院では、高等部の「家庭基礎」の授業内で実施しています。CBLでは、調査・解決策の構築とともに、“自分たち自身で行動してみる”ことを重視しており、生徒たちはこの活動を通して、さまざまな事柄にChallengeしていきます。

  • 見つけた問題に
    ついて深く調べる
  • 原因の仮説を
    立てて検証し、
    課題を設定する
  • 解決法を策定し、
    実行する
  • 解決策の効果を
    検証する

課題解決型の学習[高等部・家庭科]

授業では、クラスごとに4名程度のグループになり、課題を設定し、それぞれ調査・議論を重ねて解決策をまとめ、行動を起こします。その後、各クラスでの発表会を経て、最終的には学年代表を決定。代表班は交流校にてプレゼンテーションを行います。

卒業生の協力

学生生活の合間を縫って、本校卒業生が授業に参加。自らの経験をもとに、後輩たちへ有益なアドバイスをしてくれています。実際に起業した卒業生から講義のような形で話をしてもらうこともあり、将来を考えるうえでも、とてもよい刺激になっているようです。

メンター制度

生徒の議論のサポート役として、学年・教科を問わず、およそ30名の教員がメンターとして各グループの担当となり、授業内外でアドバイスを行います。テーマの深め方・作業の進捗確認・解決策の提案やアクションのための下準備に必要なことは何かなど、生徒自身に考えさせつつ、必要なタイミングで声をかけられるようにしています。

代表班の成果

◉チェンジメーカーアワーズ全国大会 ★チーム部門 銀賞[2022] ★グローバルリンク賞[2018]
◉サスティナビリティアワード[2020]★最優秀賞
◉関西学院千里国際での交流・発表[2021・2022]
◉日本地理学会高校生ポスターセッション[2016~2022]
★会長賞[ 2021 ]/理事長賞[2016・2021]
◉マイプロジェクトアワード全国大会[2020]

外部のコンテスト

3~5年時の「起業体験プログラム」や「CBL」で培った経験を活かして、課題解決に取り組み、実行する生徒がいます。外部のコンテストにも応募し、大勢の人の前で発表し、評価を受けます。生徒の自主的な取り組みではありますが、担当教員がサポートしています。グローバル社会で本校がめざす「起業マインドを持った女性リーダー」の育成に向け、利潤だけでなく、よりよい未来を創造するために必要な“理念” を大切にする姿勢を重視する取り組みです。

アクティビティ 中等部 起業家的マインド形成のための数々の取り組み

問題発見力・共感力・発信力・内省力・基礎学力を育成するためのさまざまなプログラムを有機的に関連づけ、学校外と連携しながら実践を通して能力が身につくよう生徒が主体的にチャレンジできる機会が用意されています。

サスティナビリティについての学習[1年生]

1年生は総合的な学習として「サステナビリティ(持続可能性)」について学習します。千葉県木更津市にあるクルックフィールズを訪れ、環境に負担をかけないソーラーファーム、養鶏場や酪農場から出た動物のフンを堆肥にする堆肥舎、微生物や植物の力による水質浄化システムなど、自然由来のエネルギー、人と自然が共生できる循環の形を見学・体験します。体験のあとは班ごとにプレゼンテーションをし、クラス・学年で考えを共有します。
品川女子学院で頻繁に行われる話し合いや発表の基礎の形を学び、集団行動のなかでルールを守ることや、クラス・学年で親睦を深めることも目的とした行事です。

プログラミング的な思考を習得する学習[1年生]

クルックフィールズで学んだことを踏まえて、「身の回り」にある「サステナビリティ」について、身近な領域で起きている課題を自分なりに見つけ、周囲と協力して解決策を考え、社会に提案する形で文化祭発表を行います。その後、身の回りの課題発見と課題解決をテーマとして、身近な人への観察やインタビューを通して、身近な人が抱える課題を自分なりに掘り起こします。その課題に対して、すでに存在しているデバイスをどのように応用、または改善することで解決に近づくことができるかアイデアを考え、実現させるべく、デバイスのシステムを設計します。こうして、観察と共感を踏まえた試行錯誤を繰り返していきます

日本文化・企業文化を知る学習[2年生]

2年生は宿泊行事で京都を訪れます。「日本を知る」プログラムの一環として訪れるのですが、単に京都の神社仏閣を巡ることで「日本の伝統文化に触れる」だけが目的ではありません。京都には、世界有数の観光地としての顔を持つ一方で、最先端の技術を持っている先進的な企業と、伝統的な商品を販売し続けている歴史ある企業とが共存しています。そこで、企業訪問やフィールドワークを通じて「京都ならではのビジネス」に触れて、身近に感じているビジネスの姿、ビジネスの在り方と比較します。このように、さまざまなビジネスと向き合い、企業としてどのように地域社会と関わっているか、どのような形で社会貢献しているかを見つめ、3年生で実施する起業体験プログラムへとつなげていきます。

研究開発完了報告書・研究報告書

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