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白ばら日記

今だから話せる制服のエピソード・大学出張授業【駒澤大学】

大学出張授業の様子を担当の河合から報告します。この話で、制服のことを思い出しました。もう時効だと思うので、笑い話として。

本校の制服は、学校改革の一環で、私を含めた教員のチームでデザインしました。改革には、学校のすべてをゼロベースで見直し、生徒の自主性を育てる学校にしたいという目標がありました。そこで、制服も、他にない斬新なもので自分の通う学校に誇りを持てるような物に、組み合わせを自分で選べて毎日が楽しくなるように、個人の体感温度に合わせて組み合わせられるようなものに・・・など、大事にすることを決めてから作りました。その結果、「制服は持ちのよい制服素材」が常識の時代に、発色がよく着心地がいい婦人服素材を採用するというチャレンジもしました。

当時は、日本全国どこにもない色柄でしたが、今は、このジャケットの色が制服カラーとして受け入れられるようになってきました。

そんなあるとき、驚いたことがありました。地方の実家に帰っていた教員から連絡があり、

「朝起きて、窓の外を見たら、うちの生徒が集団で歩いている。その中に男子もいる!」というのです。

何を寝ぼけているのかなと思いましたが、事情を調べたら、本校の制服を作っている工場に、同じ物を作ってほしいと依頼した学校があったのでした。工場も全く同じはまずいだろうとはおもったものの、本校には伝えず、少しだけパターンを変えて提供してしまったとのこと。

制服を作ったとき、特徴ある色柄だったので、意匠登録的なことをしておこうかと調べたのですが、少しでも変えると違法ではないとわかり、あきらめた経緯がありました。

その後、その学校がなんと甲子園に出たので、スタジアムで本校とほぼ同じ柄のスラックスをはいた男子生徒が集団で応援しているという光景を目にすることになりました。

後日、この学校の経営者と、あるカンファレンスでお目にかかる機会があり、名刺交換した途端、

「いつか謝らなくてはいけないと思っていました。先代が制服を変更しようと上京して街でリサーチしたところ、品女の制服が目にとまり気に入って、これしかない!この制服で!となってしまったんです。」

とお話しされました。

実は、この学校の前にも、制服を送ってほしいと連絡を受けたことがあり、用途を聞いたら同じ物を作りたいというお話。「双方の生徒にとって気持ちのいいことではないのでは?」と申し上げてその話はなくなりました。また、キャメルのジャケットと、今はない中等部の赤スカートを組み合わせた制服を作った学校もあり、「どのような経緯でしょうか」とお手紙を差し上げたところ、「違法でないのに何が問題ですか?」とお返事をいただいて、そのままになったこともありました。

と、いろいろなことを体験した後だったので、きちんと経緯を説明してくださったことを,むしろありがたく思い、「甲子園のときは驚きましたよ」と、和やかな雰囲気になりました。

私たちは、学校の何かを見直すとき、いつも、「何のために」を大切にしてきました。だから、もし、たまたま形の似たものが他に出てきたとしても、それは問題ないと思えるようになりました。それに、私たちも、他校のよいところ、また学校以外の組織からも多くのことを学び、学校運営に活かしています。

そうして、校内外の多くの方にお世話になってきて、今は、いただいたご縁や恩を返すため、よいことは積極的にシェアすることが大切だと思うようになりました。

 

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駒澤大学から, 知的財産法がご専門の小嶋崇弘先生にお越しいただきました。

「パクリはどこまで許されるのか」をテーマに, 高校生にとって最も身近な法律とも言える著作権法について, 具体的にどのようなものがカバーされているか条文をもとに解釈を するという, 法学部に入ればどの分野であっても共通して行う作業を, 最初に行いました。

最初に,条文に基づいて「アイデアは保護されず, 表現のみを保護する」という約束事を理解したうえで, タウンページ判決,ライントピックス判決,古文単語判決など, 具体的な判例を用いながら,生徒自身は「創作性があると思うか, ないと思うか」を考え, 実際に裁判ではどのような観点に基づいて,「創作性がある」 と判断されたか,「創作性がない」 と判断されたかを確認していきました。

画像に写っているように,博士イラスト事件をグループごとに「 創作性があるか,ないか」について考えてみました。 生徒は8チーム中,7チームが「知的財産を侵害している」 と判断しましたが…実際は非侵害という判決が下されています。 理由は,「格好と体型は,ただのアイデアに過ぎない。 顔のパーツが類似している点については、 ありふれた表現なので創作性がない」と。

楽曲が似ているとして訴訟になった「記念樹事件」については, 2つの楽曲を聞き比べてイメージを持つだけでなく, 実際の裁判と同じように楽譜を1音ずつ対比し, グループごとに考えました。

実際には,第1審では非侵害,控訴審では侵害という判決でした。 ここから分かることは,裁判官によって意見と解釈が異なるので, 絶対の答えがないということでした。だからこそ「 法学は説得の学問」であり,「論理的に主張を組み立て, 自分の見解を他者に説得的に伝えること」が法学の学びであり,「 多様な利益に配慮し,調整を図る」ことこそ, 法学の原点だと締め括られました。

話を聞いた生徒からは,「 どうして著作権法を専門にしようと思ったか」「 日本と海外での知的財産の対象は違いは?」 といった質問が出たほか,「法律そのものを学ぶと思っていた」「 法学を学ぶことの意義が分かって良かった」 といった感想を聞くことができました。