PRODUCED BY 品川女子学院
白ばら日記

課題解決型学習での生徒の気づき

今,教育改革が進む中で、教育手法も変化いています。従来の一斉教授型から、個人ワークとグループワークを組み合わせた「個別と協働」型の授業、また、教えられた正解を記憶するような授業から、自ら課題を見つけ、解決法を考え行動するような「課題解決学習」など。 テクノロジーの進化で、AIにできることが増える中、これまでの蓄積がないような新たな課題に向き合うとき、人間ならではの力が発揮されます。未来社会の変化に備えて、そんな力と志を育てていきたいと思っています。 これまで行ってきた企業コラボや起業体験などもその一つです。さらに、ここ数年は家庭科の授業の中でチャレンジベースドラーニングとよぶ、身近な課題を発見して解決のアクションを起こす授業に取り組んでいます。生徒のチームには、家庭科の教員だけでなく、ボランティアで手を挙げた多様な教科の教員がメンターとしてつきます。 昨年度の取り組みが、記事になりましたので、ご紹介します。 「子宮頸がんについてもっと多くの人に知ってほしい。品川女子学院から始まった「子宮頸がんかるた」プロジェクト」(私学妙案研究所News) 「課題解決型学習から得られるものは何か 品川女子学院「子宮頸がんかるた」プロジェクトで見えたもの」   生徒達の気づきをシェアします。以前、生徒に「恵まれすぎていて社会課題が分からない」と言われたことがありますが、このプログラムの中で、課題に気づき、考えを深め、チームで動く力が育まれていることが分かります。 ・今まではグループで何か活動をするときも大体中心メンバーがいて、他の人は何もしないというような ことが多かったが、CBLは全員がちゃんと動かないと終わらないので、全員で協力できた。今までやっ てきたグループ作業より楽しくて、やれる人がやればいい、から、全員でやる方が楽しいという考え方 になった。 ・CBLは正解がないから、自分たちで考えるしかなくて、色々実験などを考えるのが楽しかった。将来会 社に就職したくないと思っていたけど、こういうことが出来るならありだと思った。 ・今までいつも人の意見を聞いて「確かに!」ということばかりだったが、人の意見を聞いて自分の思っ たことについて発言してみたり、自分の意見について考えられるようになった。また、今まで何かを真 面目に一生懸命やることが、やらなくちゃいけないこと以外にはなかなかなくて、自分から「もっとや ろう!」って気になることが新鮮だった。 ・前は、資料の分析や考えることが苦手だった。考えるのも嫌だった。今は、わかりやすく”伝える”こと の大切さを知った。ただ、誰かの文をそのままコピーするのではなく、自分の言葉で伝えることがいい のだと思った。 ・自分がこんなにも普段から身近で行われていることに対して疑問や関心を持っていないことに驚いた。 CBLを通して、1つの社会問題がどんなに小さなことだとしても、問題を解決しようと自分でアクショ ンを起こすことの大変さや重大さを学びました。 ・自分が少し行動したからといって何も変わらないと今までは感じていたことも、実際に身近な品女生の 歩数が伸びているのをみて、思っていたよりも1人1人の私自身の行動が大切だと知れた。 ・今まで自分が品女で培ってきた経験の多くを生かすこともでき、まだ未熟な点が多くあることに高校生 の今から気がつくことができた。 ・十人十色は言葉の通りで、同じ歳で同じ学校に通っていても、ものの考え方や”この人はこんなところに アンテナはっているのか!”というようないい意味での驚き、刺激があり、以前よりも自分と違う考え方 をする人に寛容になれた気がする。 ・グループで話し合いを作っていく中では、メンバーの多様性が大切だなと実感した。今までは自分と仲 が良い、同じような性格の人たちが集まって作業した方が楽だと思っていたが、今回色々なタイプの人 が集まり、役割分担や話し合いがうまく調和したなと感じた。 ・普段関わりのない人と関わって、問題を解決しようとするために話し合い、外部の人や知らなかったこ とを多く知ることができたので、新しいことを知る楽しさを再確認できた。 ・問題の解決策を生み出すだけではなく、それを実行し、ダメだったところを改善することで、より良い 解決策を見つけることができるんだとわかった。 ・CBLを始める前は日常で多々ある困ったことや問題点などをどうにかしたいけど自分の力じゃ無理だと 思っていたが、行動を起こせば変わると思えるようになった。 ・(緊急事態宣言の閉校期間)zoomで授業を受けたり、先生が作って下さった動画をみて勉強することがほとんどで、友達とも話すことがなく、必要最低限しか外に出なかったので、親としか話していない中でのCBLの授業で友達と話し合うのは新鮮でとてもよかった。友達と他愛ない話をするのは学校生活の中で大切なのだと気付かされた。 ・初めて身近な問題を解決しようとプランをたてて、解決策を実際に実行してみるということをして、エ ピソード集め(身近な問題集め)の段階から身近には今まで気がついていないだけで、解決すべき問題 がたくさんあるんだと思いました。また、CBL期間中は1つの問題を長期的に解決していくということ を通して、1つの物事を改善にもっていく難しさ、解決策をみんなに積極的にやってもらう難しさを感 じました。全体を通して、長く大変だったけど、班員と協力して楽しく、やりがいのある問題に取り組 めました。 ・次の話し合いまで3日しかなかったため、お風呂に入っている時も考えていた結果、急にアイディアが 浮かんできて、でもそのアイディアにもまだまだ穴があって、だけど一度考えてみたものだし、提案し ようと重い提案してみました。普段からあまり自分の考えていることを外に発せないので、変に思われ たらどうしようと思いながら提案したのですが、ある1人の班員が「いいと思う!」と言ってくれた時 にお世辞でも嬉しく、自信のないものだったけど認めてもらえたような気がしてとても嬉しくなったの を覚えています。そのアイディアから改良を加え、解決策になり、最後にはみんなに使ってもらえてさ らにプレゼンも形にできたのがとても嬉しかったです。この経験を通して、私も人に積極的に「いい ね!」を言える人になりたいと思いました。 ・自分の意見をしっかり伝えるのと同時に、相手の意見をしっかり聞くことが大事ということがわかりま した。これは当たり前のことだと思いますが、とても難しいことだと気がつきました。自分と違う意見 を否定するのではなく、なぜそういう考えになったのかを考えることによって、相手の意見の良さがわ かり、お互いがお互いの意見の良さがわかるので、より良い意見が見つかることが分かりました。 正直人と協力してやるより一人で頑張る方がいいと思っていたが、「一人では絶対できなかったな」 「メンバーがいてくれてよかった」と感じることが本当によかった。 ・CBLを通して、仲間との関係の重要さがわかった。ありがとう、お疲れ様を欠かさず言うと全員が心地 よく進めることができた。 ・こういう風に一から十まで自分たちでこんなに深く細かく1つのことを調べ上げるなんてなかなかな い。意見を1つ立証するにもたくさんの根拠や数字が必要なのだと知り、偏った意見はもう持てない なぁと思った。 ・多数決で決めたほうが早く決定できるが、時間がかかっても全員の納得会を話し合うことで、全員が責 任をもって取り組めた。最終的にはこの方法が効率がよかった。 ・CBLの活動を通して、大きな課題・問題であっても、身近な部分から自分たちがアクションを起こせ ば、解決策が見えてきて、またさらにアクションを起こしたくなる。そんな気持ちが芽生えました。こ れから大学生になっても、社会人になってもこの気持ちを忘れず、チャレンジして学ぶ心を育て続けた いと思いました。 ・自分はリーダー気質だと思ってたけど、実際はそんなことなくて、多くの人に支えられながら、自分ら しさを発揮できることを知った。上に立つのではなく、協力して進めることが私は得意なことに気がつ いた。 ・「得意な分野で貢献し、苦手な分野は任せる」ことが体得できた。それが許されることで、チームのた めになるのだと理解することができた。チーム内の雰囲気を明るく、正直なことを言える場にしておく ことで、個々の得意分野を心地よく生かせると気づいた。チームのために何か作業をしてあまりしんど いと思わなかったのは初めてに近く、自分自身の新しい発見だった。 ・社会の色々な問題について目がいくようになった。そして、その問題をどのように解決すれば良いのか も考えるようになった。既存の解決策も、もっとこうすればいいのにという観点で見れるようになっ た。 ・ただ問題だなと思うだけではダメなことに気付かされた。問題と言っても細かくみて、どの部分が原因 であるかを考え、またそれに対してどのように解決するか、生半可な気持ちでできないなと思った。 日々些細なことでも、何が原因なんだろうと考えられるようになりました!! ・仕事の役割分担や、同じ役割の人との情報共有がしっかりできていなかったため、個人の仕事量に大き な差ができてしまった。これらを解消するためには、それぞれの仕事の内容や進捗状況を逐一報告し合 うべきだったと思う。 ・みんなで話して意見を出すことがあまり得意なほうではなかったが、1人での作業とは違った見方や策 を出すことができ、楽しさもあり、グループならではの苦労もありながら、グループワークを好きにな れた。 ・テーマから全て自分たちのやりたいことを自由にできて、サポートも手厚かったため、心から”変えた い”と思いながら熱心にできることを見つけた。自分でもその気づきから行動し、何かを変えることがで きると自信がついた。 ・ただ意見をいうだけでなく客観的な立場から言うよう心がけたり、反対意見を言う時には代替案を提案 するようにした。 ・班がピリピリしているときに意見だけ言ことはダメだと再確認した。 ・途中色々迷ったり、テーマと少し違うことを調べたりしていたので、テーマの一貫性が足りなかったと 思う。しつこいほどテーマの再確認をして、解決策に導いた方がよかったと思った。 ・メンバーと半年間やっていく難しさ。皆モチベーションが下がる時もあるので、その時にいかに話に参 加させるかや仕事の振り方で作業効率が上がるか等のことが難しくためになった。 ・話がつまってしまっている時は明るく雑談に話を進めたり、班内で仕事量に差ができないように均等に 割り振って互いに信頼と責任を持たせて仕事ふることが出来た。 ・夏休みなど学校がないときの予定表を作り共有した。また、その予定表通りに進められるようにメン ターの先生と連絡をとったり、CBLの班のslackで「◯◯日に◯◯やる」や「記録シートに各自が書いて おいてほしいこと」などを送ることで誰かが忘れることを防いだ。 ・誰かがやるからいいやではなくて、自分からもっと積極的に動こうと思った。 ・話すだけじゃなくて、相手のことも聞かないと良い話し合いはできないんだとわかりました。 ・今誰が何をしていて、期限がいつまでなのかなどを、slackなどで定期的に流した方が互いに安心できる と思う。互いの進捗状況がわからないと、自分だけ重いタスクを任されているんじゃないかと不満を感 じることもあると思うので… ・記録シートに仕事内容ややるべきことを書いていたが、認識の違い、仕事内容の勘違いが起きてしま い、班の雰囲気が悪くなってしまった時、記録係の延長としてその日のうちに話し合った内容と、次に 誰がいつまでに何をやるかを簡潔にまとめたものをグループのLINEに送り、すぐ見れるようにして、勘 違いを防ぐことを提案し、実行した。それ以降勘違いは起きなかった。 ・1人の意見がしっかりしていれば進むと思っていたけれど、みんなの納得できる1つの案の方がうまく進 むと気がつきました。 ・改めて諦めないことの大切さを感じた。本当に考えて頑張ったものは達成感も大きく、ようやく達成感 を感じることができた気がする。どんなに大変でも感謝すること、人に頼ってもいいんだなと思った。 「班長だから自分が一番にやる」という場面と、「全体を見て最後にまとめる」という2つの役割をそ の時の状況を見極めて担うようにした。 ・自分はそうじゃないと思っていたことを誰かが言った時に、頭ごなしに否定するのではなくて、1回受 け止めて自分の中で消化してから、肯定・否定の意見を言えるようになった。 こうした気づきを読んでいて、また、卒業生の調査から、本校の様々なプロジェクトが社会で生きる力を育んでいることを確信し、さらに磨きをかけていきたいと思っています。そして、この学びを中断してしまう記憶型の大学入試が一日も早く変わることを願って提言の場でもこうした事例をまじえて、常に発言しています。その甲斐あって、検討する場が設けられ、具体的な動きも出てきました。子供達の未来から逆算し、将来社会に貢献できるような力を中高時代につけられるよう、これからも、このような取り組みを進めていきます。

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白ばら日記

6年生体育祭Tシャツ・卒業生の便り・本の紹介

  本校のシンボルフラワー、薔薇の季節になりました。 ベランダから甘い香りが漂ってきます。     体育祭は残念ながら中止になってしまいましたが、6年生が作った学年Tシャツを持ってきてくれました。右は裏面。受験は一人でするものですが、受験勉強はみんなでする、が品女流。   74期のチームの力で、学年カラーのピンクのように一人一人のサクラサク春がきっときます! *児童相談所で心理判定員として勤務している卒業生から近況報告が 来ました。心理学を学びたいと進学し、大学院を修了後、 今の仕事についたそうで、取材されたサイトが以下です。こうして、一人一人が夢を叶えて幸せに過ごしている様子を聞くことはうれしいです。母校は自慢話を気軽にできる場所でありたいと思っています。と、同時に、思い通りにならない時期にもふらっと立ち寄って愚痴を言えるそんな安心できるもう一つの実家でもありたいと思っています。 https://mirror.asahi.com/ article/14222826   *礼法の授業でお世話になっている小笠原流のご宗家からご著書をいただきました。 「外国人とわかりあうために 英語で伝える日本のマナー」 日本で古来大切にされてきた礼儀作法・しきたりの要点とその意味を簡明に記し、その英訳も付けた本です。自分の勉強に、また、海外の方に説明をするときにも便利です。

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白ばら日記

女性の社会活動の応援

  不思議な木に出会いました。楓なのですが、緑と赤の葉の枝が同じ木から伸びているんです。接ぎ木だと思うのですが、初夏の青空に映えてはつらつとしてました。なんだか、多様性を象徴しているような気がして、お家の方に許可をいただいて撮影しました。 楓は秋を象徴する木かと思っていたのですが、着物文化に接するようになり、夏の柄でもあることを知りました。赤い葉の柄は秋によく見ますが、青い葉は「青楓」と呼ばれ、初夏の模様として描かれます。 青、橙、赤、と色を変えていく、そこから、花言葉の中に「美しい変化」というものがあるようです。 そのほかにも、「大切な思い出」「遠慮」と言う言葉を見つけました。どうしてかなぁと思いを巡らせるのも季節の楽しみです。 鼎談のお知らせです。 「婚活」などの造語も作ったジャーナリストの白河 桃子さんが、バースデーチャリティの対談をクラブハウスで企画しています。 応援している団体は、以下です。白河さんの紹介から抜粋。 NPO法人3keys 代表理事 森山誉恵さん家とパブリックの中間的な場所 ー安心して一人になれる10代のサードプレイス。虐待や家庭環境の理由から保護され施設で暮らす子どもたちや、相談できる人がいない10代の相談プラットフォームですが、コロナ禍で相談が激増しているそうです。 NPO法人アシャンテママ 栗山さやかさん@モザンビークアフリカ、モザンビークの北部の町で、2009年に遺児や病児、障がいと共に生きる子供達への教育支援を主とした団体「アシャンテママ」を設立。2016年からマラウィ南部の小村でも親を亡くした子供達への教育支援を開始。著書「なんにもないけどやってみた」(岩波ジュニア) 私も同じ還暦の誕生月ということで、お手伝いすることにしました。ライフイズテックの讃井さんと三人の鼎談です。 「漆紫穂子先生に聞く!日本の教育、ギガスクールって大丈夫? 」4月 28日 (水曜日)⋅21:00~22:00https://www.joinclubhouse.com/event/xX7w0Kwb

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白ばら日記

季節をめでる心・お知らせ

  藤の季節になりました。 散歩をしていたら、 紫の藤の横に、白い藤が! 甘い香りがただよっていました。 昨年度の茶道の授業の様子です。 C棟の教室に仮に作った作法室で、感染防止の工夫をしながら、 なんとか実施しました。以前、お家元に「秋は月がきれい、 と誰かが教えてあげないと子供はそれに気づかない」 とお話いただいたことがあります。茶道は総合芸術、亭主が考えたテーマが、 掛け軸やお花などのしつらえに表現されます。客にもそれを受け取る教養が必要です。 季節感を大切にし、 それを互いの気持ちを察しながら愛でる、そんな心も茶道の中で学んでいます。 *茶道1回目 *茶道2回目 *茶道3回目 *茶道4回目   *以前にもご紹介 したダイアログ・イン・ザ・ダークからのお知らせです。

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新たな体制

年度初めの準備が一段落しつつあります。還暦にもらった60本の赤い花が玄関を飾ってくれています。 6年生は部活も引退、担任との進路面談が始まり、いよいよ受験生モードです。 昨年、仙田校長から、母校の校長候補になっていると相談され、「もし、これがうちの卒業生だったら母校を大切にしてほしいと思うだろうな」と共感し、応援しました。そのため、描いていた構想が一年前倒しになり、副教頭兼5学年主任だった国語科の神谷が、今年から中等部校長に就任することになりました。   高等部校長は、副教頭兼6学年主任だった英語科の権藤が務め、6年生の主任には、進路指導部長を長く務めてきた斉藤が就任しました。神谷も高等部副校長として、全校体制で最高学年を応援します。 私たちの学校は、女性に参政権のない時代に創立され、今も女子教育を貫いています。日本は、女性の活躍を示す最新のジェンダーギャップ指数で世界120位、少子化の進む中で、女性が社会を支える余地がたくさん残っている世界でもまれな国です。縁あってここに集う生徒の皆さんには、これを人ごととせず、自分の問題として関わってほしいと願っています。 社会問題を自分事として考え、解決の一歩を踏み出す、そんな女性が育つ場として、品女はもっともっと生徒一人一人が責任を持って学校運営に関わっていく、そんな学校にならなければいけません。 生徒が能動的に関わる学校、そのリーダーとしての新校長を、30年以上この学校に携わり、多くの卒業生を出し、この学校を大切に思っている2人に務めてもらうことを決めました。 始業式はZoom で行いました。初めての試みで、機材トラブルもあり、ちょっとバタバタしましたが、これもチャレンジです。新たに迎えた教員を紹介する着任式も行いました。 始業式表彰 *情報<ライフイズテックレッスンコンテスト>特別賞 江尻さん、松井さん敢闘賞 林さん *ダンス部<第1 4回日本高校ダンス部選手権(ダンススタジアム)新人戦>ベストビジュアル賞 「5年生チームPolaris」  

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今だから話せる制服のエピソード・大学出張授業【駒澤大学】

大学出張授業の様子を担当の河合から報告します。この話で、制服のことを思い出しました。もう時効だと思うので、笑い話として。 本校の制服は、学校改革の一環で、私を含めた教員のチームでデザインしました。改革には、学校のすべてをゼロベースで見直し、生徒の自主性を育てる学校にしたいという目標がありました。そこで、制服も、他にない斬新なもので自分の通う学校に誇りを持てるような物に、組み合わせを自分で選べて毎日が楽しくなるように、個人の体感温度に合わせて組み合わせられるようなものに・・・など、大事にすることを決めてから作りました。その結果、「制服は持ちのよい制服素材」が常識の時代に、発色がよく着心地がいい婦人服素材を採用するというチャレンジもしました。 当時は、日本全国どこにもない色柄でしたが、今は、このジャケットの色が制服カラーとして受け入れられるようになってきました。 そんなあるとき、驚いたことがありました。地方の実家に帰っていた教員から連絡があり、 「朝起きて、窓の外を見たら、うちの生徒が集団で歩いている。その中に男子もいる!」というのです。 何を寝ぼけているのかなと思いましたが、事情を調べたら、本校の制服を作っている工場に、同じ物を作ってほしいと依頼した学校があったのでした。工場も全く同じはまずいだろうとはおもったものの、本校には伝えず、少しだけパターンを変えて提供してしまったとのこと。 制服を作ったとき、特徴ある色柄だったので、意匠登録的なことをしておこうかと調べたのですが、少しでも変えると違法ではないとわかり、あきらめた経緯がありました。 その後、その学校がなんと甲子園に出たので、スタジアムで本校とほぼ同じ柄のスラックスをはいた男子生徒が集団で応援しているという光景を目にすることになりました。 後日、この学校の経営者と、あるカンファレンスでお目にかかる機会があり、名刺交換した途端、 「いつか謝らなくてはいけないと思っていました。先代が制服を変更しようと上京して街でリサーチしたところ、品女の制服が目にとまり気に入って、これしかない!この制服で!となってしまったんです。」 とお話しされました。 実は、この学校の前にも、制服を送ってほしいと連絡を受けたことがあり、用途を聞いたら同じ物を作りたいというお話。「双方の生徒にとって気持ちのいいことではないのでは?」と申し上げてその話はなくなりました。また、キャメルのジャケットと、今はない中等部の赤スカートを組み合わせた制服を作った学校もあり、「どのような経緯でしょうか」とお手紙を差し上げたところ、「違法でないのに何が問題ですか?」とお返事をいただいて、そのままになったこともありました。 と、いろいろなことを体験した後だったので、きちんと経緯を説明してくださったことを,むしろありがたく思い、「甲子園のときは驚きましたよ」と、和やかな雰囲気になりました。 私たちは、学校の何かを見直すとき、いつも、「何のために」を大切にしてきました。だから、もし、たまたま形の似たものが他に出てきたとしても、それは問題ないと思えるようになりました。それに、私たちも、他校のよいところ、また学校以外の組織からも多くのことを学び、学校運営に活かしています。 そうして、校内外の多くの方にお世話になってきて、今は、いただいたご縁や恩を返すため、よいことは積極的にシェアすることが大切だと思うようになりました。   *****     駒澤大学から, 知的財産法がご専門の小嶋崇弘先生にお越しいただきました。 「パクリはどこまで許されるのか」をテーマに, 高校生にとって最も身近な法律とも言える著作権法について, 具体的にどのようなものがカバーされているか条文をもとに解釈を するという, 法学部に入ればどの分野であっても共通して行う作業を, 最初に行いました。 最初に,条文に基づいて「アイデアは保護されず, 表現のみを保護する」という約束事を理解したうえで, タウンページ判決,ライントピックス判決,古文単語判決など, 具体的な判例を用いながら,生徒自身は「創作性があると思うか, ないと思うか」を考え, 実際に裁判ではどのような観点に基づいて,「創作性がある」 と判断されたか,「創作性がない」 と判断されたかを確認していきました。 画像に写っているように,博士イラスト事件をグループごとに「 創作性があるか,ないか」について考えてみました。 生徒は8チーム中,7チームが「知的財産を侵害している」 と判断しましたが…実際は非侵害という判決が下されています。 理由は,「格好と体型は,ただのアイデアに過ぎない。 顔のパーツが類似している点については、 ありふれた表現なので創作性がない」と。 楽曲が似ているとして訴訟になった「記念樹事件」については, 2つの楽曲を聞き比べてイメージを持つだけでなく, 実際の裁判と同じように楽譜を1音ずつ対比し, グループごとに考えました。 実際には,第1審では非侵害,控訴審では侵害という判決でした。 ここから分かることは,裁判官によって意見と解釈が異なるので, 絶対の答えがないということでした。だからこそ「 法学は説得の学問」であり,「論理的に主張を組み立て, 自分の見解を他者に説得的に伝えること」が法学の学びであり,「 多様な利益に配慮し,調整を図る」ことこそ, 法学の原点だと締め括られました。 話を聞いた生徒からは,「 どうして著作権法を専門にしようと思ったか」「 日本と海外での知的財産の対象は違いは?」 といった質問が出たほか,「法律そのものを学ぶと思っていた」「 法学を学ぶことの意義が分かって良かった」 といった感想を聞くことができました。

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白ばら日記

全校オリエンテーション、大学出張授業【日本女子大学・芝浦工業大学】

  今日は全校オリエンテーションでした。私は、1年生と4年生でお話ししました。   午後は、1年生と写真撮影。主任が晴れ女(自称)なので、 ポカポカと気持ちのいい天気でした。この子達が6年後、どんな姿に成長するのかなぁと思うと、 笑顔になります。     大学出張授業の様子を担当の窪田と中山から報告します。   「特別支援教育とインクルーシブ教育」というテーマで、日本女子大学人間社会科学部教育学科の特任教授である宮井和惠先生に、リモートで講義をしていただきました。 特別支援教育とは障害を持つ子どもの教育のことをいいますが、障害があるかどうかにかかわらずそもそも人間は違うものなので、教育そのものの大前提にもなります。 インクルーシブ教育とは、多様性を尊重するということを前提に、障害を持つ子どもが自由に社会に参加できることをめざし、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶという教育のシステムのことで、2012年から制度として推進されています。 具体的に、問題行動をとる子どもへの対応はどうしたらいいのでしょうか。 私たちは「問題点を小さくする」という方向で考えてしまいがちですが、どんな人間にもいいところがあります。そのいいところを大きく広げることで、問題点が占める部分が小さくなるのです。「いいところや得意なところを大きくする」という考え方で問題解決にあたることが大切です。 考え方を理解するために、参加生徒同士で「リフレーミング」をしました。「短所を長所に言い換える」という練習です。最初に具体例の練習をした後、「自分の短所」を書いたものを近くの人と交換して、それを同じ方法で実践しました。 特に自分の短所が長所に言い換えられた時の喜びは大きく、子どもの立場に立つという経験ができました。また、自分は違った視点もあることが確認でき、様々な物の見方があることもわかりました。 問題行動を起こす子どもはいつも叱られてばかりいるため、リフレーミングをすることで自信がもてるようになります。そして、問題行動という形で見える部分は氷山の一角であり、その背景の大きな部分は見えないところにあるので、それを探ることも大切です。 障害などが原因でできないことがあるとやる気がなくなり、問題行動をとることもあるので、ユニバーサルな教育をすることが大切で、それは健常者にも効果があります。集団の中で違っていることを責め合うのでなく、違いを認め合えるようになっていきます。 生徒は真剣に話を聞き、積極的に活動をしていました。最後の質疑応答には多くの質問が発せられました。参加者には教員志望の生徒が多く、教育とは何かということを新しい視点で考えられて充実した時間でした。そして教員になってからの、さらに先の世界が見えたようで、意欲を新たにしていました。   ——————————–   芝浦工業大学の井尻敬先生に,zoom形式で「研究分野としてのコンピュータグラフィクス」をテーマにご講義いただきました. ①     大学で学ぶ情報科学・情報工学とは 「『情報』の『仕組み』を研究する学問分野」であるということ.ここでいう『情報』とは映像,音声,文章,電気信号,遺伝子など,全てのデータのことをさします.『仕組み』とは情報を表現・記録・伝達・変換・理解する方法のことをいいます.また,情報学は『計算機』の使い方を研究する学問分野でもあるということ. 以上2点から,急速に発展する計算機を何に使いますか?との問いかけがありました. ②     研究分野としてのCGについて CGの研究領域は多岐にわたっており,その例を動画などを用いてお話しくださいました.その際に数学(線形代数・微積・確率統計)などは必須であること.そして論文は英語なので英語も必須であること.そして,論文執筆や国際的にコミュニケーションをとることなどの観点から人文系科目も重要…つまり,高校での学習はどの科目も重要であるというお話がありました. ③     情報工学科や研究の紹介 芝浦工業大学工学部情報工学科では3年生校旗から研究室に配属されて研究に従事することになっており,さまざまな分野の研究室があります.(ネットワーク,IoT,プログラミング言語,人工知能,言語処理,データ工学,画像処理,スポーツ工学,社会福祉,離散数学…など) 例としてCTと写真を利用した花・昆虫の3次元モデリングの研究についてご紹介いただきました. 最後に先生から, 1次・2次・3次産業のどれを見ても計算機が必要不可欠(農業生産効率化,品質管理,CAD,自動運転,行動予測…)であり,どこでも必要とされる,つまり,コンピュータは社会の主役であること.また,情報系は医療やスポーツ、博物館,映像制作などさまざまな分野の研究開発に参加することができることなどをお話しくださいました. 井尻先生,貴重なお話しをどうもありがとうございました.

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大学出張授業【東京電機大学・日本大学】

大学出張授業の様子を担当の乃込と小藤から報告します。   12月16日(水)大学出張授業大学出張授業 講義テーマ 「自動車のデザインコンセプト」講師 東京電機大学 システムデザイン工学部 デザイン工学科トランスポ-テ-ションデザイン研究室  倉持卓司先生 12月16日(水)に4年生、5年生の6名の生徒が10時30分から約1時間模擬授業を受けました。多くの生徒が工学部に大変興味をもっている中でとても熱心に倉持先生のzoomでの模擬授業に参加していました。自動車(LAFESTA)のデザインコンセプトのお話しを中心にとても有意義なお話をいただきました。また、東京電機大学の紹介もしていただき、東京千住キャンパスや埼玉鳩山キャンパスの特徴また見学の精神や教育・研究理念また就職に強い東京電機大学などとても興味深いお話しをいただきました。生徒にとってとても充実した時間になりました。 講義内容 ・自動車(LAFESTA)をデザインするにあたり明るいデザイン(BRIGHTNESS DESIGN)にすることで、乗る人の気持ちまで明るくすることをコンセプトとして、明るさを中心として大きい窓とガラスルーフのスクエアフォルム、わかりやすく楽しい形、使いやすく考えられた親切な形がデザインコンセプトとしてある。 ・狭小住宅に見られるように小さくても工夫がつまった家、光も風も通り抜ける空間を実現した家そういったことを自動車にも実現していく。窓が大きい明るいデザインの自動車、カラ-デザインも明るい自動車。自動車カタログでも明るいデザインを表現している。 ・自動車の顔をデザインすることは人の表情やキャラクタ-に非常に近いことである。デザインコンセプトとして①楽しいFUN②鋭い EDGY③凜々しいDIGNIFIED④親しみのある FRIENDLYそれぞれ①~④において芸能人の顔が紹介されていて、芸能人の顔と自動車の顔のマッチングがとても面白かった。 ・東京電機大学の紹介 1 創立から今日まで技術で社会に貢献する人材の育成を目指している大学2 建学の精神  技術を通して社会に貢献できる人材の育成教育・研究理念  良き技術者は人として立派でなくてはならない3 1949年 大学設立2012年 大学移転(神田から北千住へ)4 卒業生数 225226人5 千住キャンパスに  システムデザイン工学部、未来科学部、工学部、工学部第二部鳩山キャンパス   理工学部6 就職に強い大学  就職内定率 98.4%  学生1人あたりの求人数 9社 ——————————– 12月16日に大学出張授業がありました。4年Dクラスの教室では、日本大学商学部の紺野卓先生に講義をしていただきました。 今回の講義は、商学の中で会計に関して焦点を当てて、お話ししてくださいました。まず、会計とは一体どのようなものか。 会計は、英語でAccountingというが、それは説明責任のことである企業の支出入など、お金の動きについて規定の形式に則って説明することだとお話しいただきました。 確かにaccountが動詞で用いられる場合、account for〜で「〜を説明する」という意味があるので、言葉の意味から会計について考えてみるという切り口が、英語教員としては大変興味深いものでした。 次に出てきたキーワードが「会計がインフラ」というものでした。投資家や株主は、ある企業の売上や利益などの情報をもとに投資などを行いますが、この情報が正しいという前提がないと、市場は立ち行かなくなってしまいます。この前提を作るのが会計であり、社会のインフラとして機能しているとのことでした。 逆に会計士がこの情報が誤っていることを見抜けないと法律によって罰せられるなど、社会的に責任を負う重要な仕事だということを理解できました。このようなことに対して、もし監査人と企業が結託してこの情報を操作したらどうなるのか、など生徒たちから多くの質問が寄せられました。 今回開講していただいた講義では、専門的な用語を終始高校生にも理解できる言葉で説明していただき、起業体験での会計などの経験から、生徒たちはこの分野への興味を掻き立てられている様子でした。「会計をビジネスのためのツールと捉え、それを活用することで、社会で活躍してください」という紺野先生のメッセージを胸に、目標に向かってますます学習に励んでいってくれることを期待するばかりです。      

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白ばら日記

大学出張授業【上智大学・明治大学】

    大学出張授業の様子を担当の田辺と金田から報告します。 大学出張授業「統計学をもちいたファイナンス」上智大学 経済学部経済学科 竹内明香先生 大学出張授業の経済学の授業として上智大学経済学部経済学科の竹内明香先生にリモート授業で「経済学をもちいたファイナンス」をテーマにご講義いただきました。ファイナンスについて話すにあたり、まずは投資について説明がありました。   投資とは「将来の収益を見越してなんらかの行動を起こすこと」であり、この講義では株式・債券という金融証券を投資対象としてお話しされました。身近な投資の例として、年金・生命保険などの保険商品・退職金などが挙げられ、投資をしている実感はないものの、実は自分たちのお金も投資として運用されています。投資をするということは、銀行で預金するよりも高い利益が得られる可能性はあるものの、得をするか損をするかということは不確実で、リスク、つまり制約があります。損失の可能性があるものの、投資による収益を得るためには、投資した額の何倍の利益が得られたのかという収益率を知る必要があります。目先の利益より、1株当たりの金額、その株の購入数、収益額を比較し、収益率を考える必要があります。期待される収益率は、購入時の株価、購入数、配当、売却時の株価によって変動し将来の収益率の予測値を考え算出、この値を「期待収益率」と呼ぶそうですが、この数値のばらつきが多いほどリスクが高くなるので、損をしないためにはばらつきの小さい株を選ぶことが投資のポイントになるようです。「ハイリスク・ハイリターン」という言葉は、日常でも聞いたことがあるかと思いますが、期待収益率にばらつきがあり、その数値が高いと収益として高い可能性はあるものの、損をする可能性も。利益だけが上がる投資はないということにでした。このリスクとリターンを可視化するために、数値化することが必要となります。ここで経済学がより一層必要になるようです。統計学として分析、数式にすることで、予測がつけられることになります。さらに、統計学を経済分析に応用するという手法もあるそうです。個人消費が増えれば景気はよくなるものの、個人消費が増えるには収入が増える必要があります。経済分析として所得と収入の数値をグラフにしデータ分析する、数式としてCi=α×βYi(C消費支出、Y所得)という式が出てきます。ミクロ経済学とも言われるものだそうですが、消費と所得の関係を裏付ける数式となっているそうです。これは政治政策にも関わることで、この数字によって政治も動くことに!なかなか難しいお話でしたが、生徒からは、「お金を持っていたら、銀行に預けるだけでなく投資をするという選択肢もあるんだなと思った」「経済学で数式を使うことを知らなかったので驚いた」「経済学は文系に分類されているが、数学の考え方も多く使われていて驚いた」という感想がありました。経済学の中で、数値化、数式の利用が多くあり、生徒には新鮮だったようです。 ——————————– 明治大学 情報コミュニケーション学部より、南後由和先生に、Zoomを利用して講義していただきました。ご専門は社会学(都市・建築論)で、講義テーマは「都市に潜むグラフィティ/落書きの秘密」です。講義スタイルは講義中心型でした。普段、話し合いなどグループ活動を取り入れた授業が多い生徒たちですが、40名超の受講者全員が、とても真剣に聴いていました。 「大学の講義」を体感できる良い機会になったと思います。講義の最初に先生は、「落書き/グラフィティ」を考察対象とする意義について説明してくださいました。普段何気なく見過ごしている日常の風景を読み解くことで、物事をこれまでと異なる角度から見ることができるようになり、それにより視野が広がったり、新しい世界が開けたりするというものです。今回の講義では、「落書き」が「グラフィティ」とも呼ばれること、「迷惑行為・犯罪」として認識していたものを「芸術」として評価する人がいることを知ることができました。また、グラフィティは「タグ」や「マスターピース」などいくつかの表現様式をもち、それぞれが発するメッセージに相違があること、書かれた場所・量には作成者の背景に迫る手がかりが隠されていることも、理解することができました。身近なところにテーマを設定し、事例を示す写真資料などを効果的に用いてくださったこともあり、一人ひとりが深く考えながら受講できたと思います。最後に出た質問も鋭いもので、先生から「良い質問ですね」とうれしいお言葉もいただけました。 通学途中にも目にするであろう「落書き/グラフィティ」ですから、帰り道の景色はこれまでと異なって見え、新しい世界が開けた人も多かったのではないかと思います。これを機会に新しい見方・考え方を身につける楽しさや喜びを知り、さらに自分の世界を広げていくことができると良いなと感じました。

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